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季節に学ぶ肋間神経痛は肝胆病

 先日、初診で来院された患者の主訴は「肋間神経痛」でした。

 話を聞くと、2週間前に急性副鼻腔炎を発症し、抗生剤を処方され、一週間ほどで治癒したが、その直後から肋骨(肋骨弓)や背中(右>左)がとても痛み、脇の下も時々痛むと言います。しかも痛みを感じる時間は活動時間の1/3くらいあるのだそうです。当院に来院する数日前に受診した脳神経外科では、副鼻腔炎による痛みだと言われたそうですが...

 この方には帯状疱疹や、肋骨及び胸椎の骨折などの病歴はありませんが、就寝時の痛み(安静時痛)もなく、痛みは先述した箇所に限局しているため、やはりいわゆる「肋間神経痛」(病名でなく症状名)と判断し、施術に臨みました。

 触診で肋骨の痛む箇所を確認すると、圧痛を強く感じるのが経穴の期門穴と日月穴付近でした。そしてその裏側(背中)は、右側の魂門穴辺りが特に痛いとの事でした。痛む箇所の共通性がここまで揃えば、治療する経脈の選択を考える必要は最早ありません。けして洒落ではないのですが、「肝胆」(厥陰・少陽脈の病症)です。

 治療は、手足の厥陰脈と少陽脈を中心に全身調整鍼を施し、期門穴・日月穴・魂門穴に軽めの透熱灸を据え終了。治療後、患者さんから「からだが軽くなり、痛みも減少している」との感想をいただきました。

 一週間後、再来院してもらい経過を聞くと、前回の治療後、肋骨と腋窩(脇の下)の痛みはほぼ消失。背中だけが残っていたが、それも三日前くらいから感じなくなったとのこと。「ああ、やっぱり肝胆で良かった」と安堵しました。でも考えてみれば、今のこの季節は肝胆の症状が表れやすい時期なのです。今回はそれがうまく合致した例にすぎませんが、改めて東洋医学の醍醐味を感じさせてくれる症例でした。

 ただ一つ、未だに釈然としないのが、脳神経外科の「副鼻腔炎による肋間などの痛み」という診断です。副鼻腔炎による随伴症状や後遺症を調べても、それを関連付ける記述をみつける事が出来ないのですが....