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刺さない鍼に思うツボ

 私が、はり治療で使用する鍼(はり)の中に、接触するだけで刺さないタイプの「てい鍼(しん)」(てい=金へんに是)というものがあります。この「てい鍼」を、どの治療目的で用いるかは鍼灸師によって異るところですか、私の場合は主に「鍼に対する恐怖心の強い患者さん」や、「皮膚刺激に過敏な患者さん」への施術に用いるようにしています。と述べますと、通常の鍼に比べて何か効果が薄れるように思われるかもしれませんが、決してそうではありません。人それぞれ感受性が異なりますし、好みというのもあります。また昨今では、皮膚は、“第三の脳”としての判断力もあると提唱する研究者の方もおられます。(『皮膚は考える』『第三の脳』/傳田光洋(資生堂研究所主幹研究員)著)これらの事柄だけを考えても、それぞれの患者さんに適した“気へのアプローチ”というのを考慮しないとなりません。見えない世界ゆえ、やればやるほど(臨床)その奥深さたるや、想像を遥かに超えていることを実感しています。そして重ね重ね日々精進なのです。患者の皆様、ありがとうございます。滋養庵