吐納(とのう)

 「吐納(とのう)とは、古いものを吐き出して、新しいものを吸い込む。つまり腹式呼吸運動のことである」。これは、恩師の石田真一先生が1996年に発行した「導引(どういん)~究極の健康法」という冊子の終わりにある一文です。「導引」とは、中国三千年の文化が生み出した、マッサージ療法のひとつで、推拿(すいな)と同様に、経絡や経穴を揉んだり撫でたりする手技(しゅぎ)のことです。しかし、推拿と決定的に異なる点は、「導引」の場合は一切、人の手を借りず、自身で行う健康療法というところです。そして「吐納」は、この導引の前後に行うと効果が一層すると冊子では締めくくっているわけですが、腹式呼吸法ですので、これだけ単体で朝晩に行うだけでも相当な養生です。
 吐納(腹式呼吸)の方法は、姿勢を正して息を鼻から深く吸い込みます。その時、下腹部(へその下あたり)の丹田(たんでん)に吸気(新しい氣))が集まるよう意識してください(下腹部が膨らむイメージ)。2~3秒息を止め丹田に吸気を留めたら、次に口からゆっくり(ごくごくゆっくりと)呼気(古い氣)を吐き出していきます。お腹の皮が背中にくっつくようなイメージで呼気を吐き切るのがポイントです。これを繰り返して5分程度やると良いでしょう。丹田は、元氣(げんき=生命力)が集まるところで、ここに力(氣)がないと、イコール「虚弱」ということになります。「吐納」することは、氣の浄化作用と同時に生命力(丹田)を養う効果もあります。師走に始める養生法としては、持って来いなのではないでしょうか。滋養庵