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不老長寿の要、営気と衛気

 東洋医学的観点から皮膚や肌に対する不老長寿(アンチエージング)を考えた場合、「気」の中でもとりわけ営気(栄気)と衛気の働きを高めることが重要なのではないかと思っています。
 営気、衛気というのは「気」を分類したもので、いずれも後天の精(飲食物によって得られる精)から造られる滋養と防衛の「気」です。ついでに申し上げると、先天の精とは両親から受け継いだ精のことで、これが変化生成して原気(元気)という「気」になります。
 さて不老長寿に不可欠と考える営気と衛気ですが、鍼灸の古典書に詳しい恩師の宮川浩也先生は黄帝内経の一文を下記のように解読されています。
 
 「榮者水穀之精氣也。和調於五藏、灑陳於六府、乃能入於脉也。故循脉上下、貫五藏絡六府也」(『素問』痺論)
榮気(営気)は飲食物のエキスである。それは五蔵をととのえ、六府に注ぎ、脉(脈)中を行(めぐ)るものである。よって経脈にしたがって上下し、五蔵六府をめぐるのである。
 「衛気者、所以温分肉、充皮膚、剛腠理、司開合者也」(『霊枢』本藏篇)
衛気は体表をめぐり、専ら体表の温度調節につとめ、汗腺の調節をあずかっている。皮膚や腠理(そうり)を充実させる仕事もしている。皺があるようでは衛気が充分とはいえない。腠理を充実させ、はりがあって、すべすべして、つまんでも皮膚と筋肉が離れないような感じが衛気がみちているのである。つまり体の表面(皮膚・肌)に衛気がめぐっていることになる。ではその下の層(真皮・皮下組織、筋肉、骨)には何がめぐっているのかが問題になる。実はその部分にも営気がめぐっているのである。経脈から滲みでて、営養しているのである。 
(鍵詞新解・営気と衛気/宮川浩也 1990,1991年日本内経医学会月報より抜粋 一部編集加筆)

 

 上記論文を踏まえて治療では、営気の賦活(高める)を全身調整法にて。衛気の賦活は局所(症状の表れている部分))や対象部分(表情筋等)への施術にて行っています。しかしこれは便宜上、切り分けただけで実際は二つの方法が複合的に絡み合い相乗効果となっているわけです。