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顔面神経痛伝説

 先日ある方から「知り合いが顔面神経で悩んでいるので診てほしい」とのお話をいただきました。確認のためにその方に「(お知り合いの方の)顔面の症状には、麻痺(まひ)や痙攣(けいれん)などはないのですか?」と訊くと、「いや麻痺も痙攣もないらしい。痛みだけだって」と返ってきました。それを受けて「痛みだけですね?」と念を押すと、「そう。痛みだけなの」とのことでした。どうやら顔面の運動を主る顔面神経ではなく、知覚を主る三叉神経痛のようです。でも、はたしてそうなのでしょうか...

 それから数日後、当のご本人が来院されました。記入していただいた予診票をみると、やはり「顔面神経」と書かれています。それはそれでいいとして、ひとまず「顔のどのあたりが、どの様に痛むのですか?」と訊くと、「いや痛みはないんです。目の下がピクピクするんです」と返ってきました。一瞬「ええ!?」と思いましたが、すぐに「ああ、やっぱりそうか」と理解しました。

 この方の症状から推測するに、医師は「眼瞼痙攣」といったのではないでしょうか。その上で顔面神経の説明を受けたんだと思われます。

 そうなんです、一般の方は「顔面神経」とくれば常套句的に「痛」をつけてしまうものなんです。私も鍼灸学校在学中、よく講師の先生に叱られたものです。それにしても “顔面神経“ という常套句は、何故こんなに定着したんでしょうね?ちょっと気になります。